第185回IEC研究会

日時:2005年6月12日(日)
   13:30〜17:15

場所:関学大阪梅田キャンパス
大阪市北区茶屋町19−19
    アプローズタワー14階
    電話:06−6485−5611
   http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/

司会:中條先生
書記:西本

出席(敬称略):野部,矢島,西本,江見,小谷,中條,金田,下倉,
飯田,河野,田中(秀),荒木,工藤,柳(ゲスト見学)
欠席(届け有,敬称略):中西,石川,横山,大森,西野,新田,正木,
西垣,高橋,福田,谷口,野口,松下,河俣

内容:
1.会務(諸会連絡・報告,情報回覧等)
(a)済んだもの
6月3日・4日 JSiSE研究会 第1回 eラーニング環境のデザイン/
一般および eラーニングの実践報告とシステム公開デモセッション
(青山学院大学)
e-learningデモを行ったのが特色
6月11日 ゲーム学会第3回合同研究会(大阪電気通信大学 四条畷
キャンパス)
http://www.dmic.org/game/topics/mail-mag/lib/43_200506_2.html
論文誌を出す予定 7月1日に投稿規定ができる予定
6月10日・11日 私情協 教育の情報化フォーラム(関西大学)
http://www.juce.jp/LINK/news/forum/forum05.htm
『教育改革を目指したeラーニングのすすめ』(回覧)どういう手順で
eラーニングを進めるか,レベル別に一覧表に各分野にまとめられて
いる(私情協加盟校には配布されている)
6月9日 内田洋行 New Education Expo2005(大阪)
http://www.manabinoba.com/index.cfm/4,5756,30,html

(b)これから
6月24日・25日 JADIE第1回全国大会(千里金蘭大学)
http://www.kinran.ac.jp/univ/index.cfm/6,1689,18,1,html
8月25日〜27日 JSiSE30周年記念全国大会(金沢学院大学)
http://jsise2005.kanazawa-gu.ac.jp/
6月17日(金)発表申し込み締切
初日10時から講演 会場の金沢学院大にはJR金沢駅からバスで
30分

2.研究報告
(グループ枠・60分)
第2・3グループ
教材作成による情報モラル教育の試み
野部緑 先生(京都府立桂高等学校)

目的:
絵本作成による具体的イメージの習得
彼ら自身の言葉に置き換えることで理解を深める
(教師からの伝達でなく,自分の問題として考えさえる)
実践内容:
事前指導 情報モラルの知識(4h),教材鑑賞
作成 パワーポイントを利用,絵はペイント
基本的なストーリーは最初に提示,自由に展開
スライド4〜6枚と提案
年下の子ども(小学生)にも分かるようにと指示
実践結果:
選択されたストーリー→身近なものを選ぶ傾向
女子 ネットショッピングの詐欺,メールのコミュニケーション
男子 ウィルス,法律違反の品物の販売
個人情報の流出 チャット,占いサイト,会員登録(これも男女差
あり)
出会い系でのなりすまし(女子),掲示板での誹謗中傷(男子)
著作権の問題は少ない
アンケート結果:
難しい,というのも多いが,一方で面白いという意見
人に伝えようとすることで,自分で考えるようになる
人の作品を見て勉強になる(教師側からすると意外な結果)
絵が下手なので,大変だった
情報モラル意識の変化:
「インターネットと情報倫理に関するアンケート」事前と事後
20項目中,7項目について有意差
うち,1項目はマイナスの方向の変化(わいせつなページを見たいと
思うか)
パスワード,市販ソフトウェアのコピーといった項目は有意差なし
自分のデータを載せるということは有意差があったが,他人のデータ
を公開するということは有意差なし
(自分の利益には敏感だが,他人の利益にまでは考えが至らない)
結論:
興味関心を持たせる点では成功
教材作成により,内容を深める点でも達成できた
相互鑑賞の方法をどうするか?
 人の作品について,考える時間をとる
 誰の作品か分からないようにする方がよいか(自分のを見られたく
 ないという生徒も)
 鑑賞そのものの時間が結構かかる;話し合いの時間をどうとるか

Q&A(Cはコメント)
Q:ネット利用している率は?
A:PC所有率は70%(ネット接続は不明);携帯サイトはよく見ている
のでは
Q:グループ発表にしてはどうか(そうすれば作品数減→相互鑑賞の
時間が節約できる)
A:特定の人間に役割が偏ったり,負担がかかる可能性が;サボリが
発生する可能性大
C:グループでディスカッションする間,教師が巡回し,時間の終わりに
この日できたところの発表をさせる
C:絵コンテ書かせ,各人がスライドそれぞれを担当する形にしては
Q:ペイントを使う必要は?クリップアートの利用は?(絵を描くことが
時間を食う要因になっているのでは)
A:グループ発表させなかった理由としては,1年の総合学習や修学
旅行のホームページ作成でグループ発表をさせているので,「またか」
という感があるのではと考えた
Q:グループ発表させることで,他人との協調共同を学べるのでは?
A:情報の授業からは離れてしまう
Q:他人のスライドを,基本線はそのままで,台詞等を差し替え各人の
意識の差異を浮き上がらせるのはどうか
A:グループでストーリーを考え,それぞれの作品を個人に作らせる
のもよいと思う;相互鑑賞会でそのあたりが現れるのが面白かった
のでは
C:授業への否定的な意見(少数):こんなものはぬるい
→では,もっと深い(濃い)ものを作らせてはどうか
C:事項を10項目あげ,自分でその中から選ばせて調べ・作成させる
のはどうか
C:絵心がないために授業が苦痛になるのは本筋から外れるので,
ストーリーを作らせること主体という方法もあるのでは
A:インターネット接続や携帯メール等,インターネット利用の状況の
アンケートはとっているのか?
Q:メールを使用しているか,など簡単なことは少しアンケートでたず
ねているが,詳しいものはしていない;一応,なぜそのストーリーを
選んだか理由を尋ねているのでそこから推測可かもしれない

今年度の学校では,1年で情報Aをした学生が,3年で情報Cをすると
いうカリキュラムになっているので,今年度は1年間かけてしようと
考えている

(生徒の相互評価が高かったppt作品を5つ鑑賞してのコメント)
小学生に見せたら面白いのではないか
子どもの視点から作られているので,小学生にもうけるのではないか
小,中だけでなく高校生に見せてもよいのではないか
(事前に,学会などで発表してもよいか,とアンケートしている)
(最後のスライドはどこが問題だったかなどを説明する記述(ナレー
ション)にすること,と指定している)
CD-ROMに焼いて,JADIEやJSiSEで小学校の先生などに配布し,
アンケートなどをとってはどうか→小学生からフィードバックがあれば,
さらに実感が深まるのでは
作品は計110ほどある;高校生の評価がよかったものではなく,全て
をそれぞれの項目を分類して提供するのはどうか

(自由枠・60分)
「韓国のコンピュータ教育」発表&懇話会
リュウ・ミンワン 先生(本日のゲスト)

会員の自己紹介(簡単に)
柳先生のご紹介:
奈良教育大に韓国から留学,伊藤先生が指導教授,日韓の情報
教育の比較がテーマ
韓国の高等学校の先生
JADIEにもご参加予定
昨年10月に来日,4月から現在の大学へ

発表内容:
<教育課程>
初等学校「実科」の中で必修;裁量時間(週2h)でコンピュータ教育に
活用可
5学年 コンピュータの操作
6学年 コンピュータの活用
* 実科とは,生活に必要なことの科目(植物を育てる,ミシンを使う,
など)
中学校「技術課程」の中で必修;科目「コンピュータ」選択可
1年 コンピュータと情報処理(仕組みと原理,情報の生産,貯蔵と
分配)
2年 コンピュータと生活(ソフトの活用,インターネットの活用)
「漢字」「環境」「第2外国語」「コンピュータ」からひとつ選択(週4h)
日本では情報モラルが重視されているが,韓国ではいまひとつ
(表面的な扱いにとどまっている)
高等学校「情報社会とコンピュータ」科目選択可
「実用数学」「生活と科学」「情報社会とコンピュータ」からひとつ
(4単位)
内容:社会発達とコンピュータ,コンピュータの運営,表計算ソフト,
コンピュータの通信,マルチメディア
中学の科目と高校の科目が重なるところ多く,困っている
韓国では,どちらかというと技術が主のように思う
日本とどう違うか,が先生の研究テーマ

教師養成システム:
初等学校(教育大学,一般大学)/中学校・高等学校(師範大学,
一般大学で教職科目履修)教育大学院もある
↓
教師資格(2級)
↓
任用試験
↓(合格)
教師
↓3年後
研修→教師資格(1級)

副専攻:
複数科目を教えられる資格(研修を受け,資格証をもらう)
人気科目と不人気科目のアンバランスの是正が目的
「コンピュータ」科目は人気科目で,他資格をもつ教師が,副専攻と
して研修を受ける場合が多い;しかし,もともとの専攻との教育視点が
違う
副専攻の先生があまり知識スキルがなく,先生に先生がサポートして
もらうという困った問題

教育情報化:
全国的に教育の情報化を推進(教育革新と人的資源開発を目的)
1. 2000年までに全ての小・中・高にPC普及,インターネット接続
 (物理的基盤構築)
2. 教員研修
3. コンテンツ開発と普及
4. ICT活用による創意的思考・問題解決力が伸ばせるように,ICT
 素養教育とICT活用教育強化
子どもの両親にも研修している(日本ではない)

Q&A
Q:「漢字」「環境」「第2外国語」「コンピュータ」から選択→どのくらいの
比率?
A:生徒は選べない;学校が選ぶ(学校でひとつ)
C:野部先生の勤務校に行き,教師が職員室で使うPCが私物なのに,
驚いた(柳先生)
和歌山では教師1人あたり1台という体制;自治体により違いが大きい
柳先生の勤務校→ノートPCを教室に持っていって使う;学校で使うPC
は,学校所有
コンピュータの先生以外でも,相応のPCスキルはある(日本とは違う)
Q:日本と違い,高等学校で必修でないのは?
A:小・中で必修のため
Q:副専攻の先生でもシラバスにしたがって授業しているのか?
A:大体沿っている(はず)
副専攻の先生からは,科目的に「安易」「容易」にみられている(教える
のが楽)傾向がある
Q:高・大入試にコンピュータ科目があるか?
A:大学入試にはある;就職に直結する科目を受けても(職業高校卒
でも)大学進学する傾向が最近ある;もとから進学志望の生徒はコン
ピュータ科目はとらない
Q:韓国への高等教育への進学率は?
A:大学進学率は80-90%;中途退学者は多い
Q:高等学校の「実用数学」「生活と科学」「情報社会とコンピュータ」
選択比率は?
A:「情報社会とコンピュータ」が多い
Q:コンピュータ言語(プログラミング)の扱いは?
A:VBについては,扱っている(高等学校);中学校ではない(昔は
BASIC);韓国でもプログラミングを教えるかどうかは,議論の対象;
情報の教師は,必要だと思っている
Q:他の科目でコンピュータを利用することは多いか?
A:他科目の先生もコンピュータ活用は考えている人はいる;職業高校
では比較的多く,進学校では少ない傾向
Q:大学入試における位置づけは?
A:2005年から受験における選択科目になったが,選択する生徒は
ほとんどいない;「コンピュータ活用」という資格があり,点数になる
韓国では実名主義,ホームページを作成し,自己紹介をすることの
危険性は韓国では認識しなかった
住民番号→韓国にはある;インターネットバンキングでは必要(個人
認識に使う)だが,それは普通は公開しない

3.その他
部外者のネット接続:HotSpotサービスに
500円で24時間使えるが,新阪急ホテルのほうで購入する(関学梅田
キャンパスのカウンターでは不可)
学校PC端末におけるスパイウェア問題が話題に;Spybotによりほぼ
駆除可ではないか?

次回第186回研究会について
7月10日(日) (関学大阪梅田キャンパス)