2.2 Webによる情報検索と情報発信

2.2.1 WWWとは

 WWW(World Wide Web)は,欧州合同原子核研究機関(CERN)で開発されたソフトの総称である.インターネット上に分散された様々な情報を統合し,それぞれの情報内に他を指し示すリンク(接続情報)を持たせ,相互に情報のレベルで接続する(図2.4).そうすることにより利用者は知りたい項目を指し示すだけで世界中の情報を利用できる機能である.結果としてWebサーバにある世界中の情報が,蜘蛛の巣のように手繰り寄せられるシステムとなっている.

 

図2.4 WWWの仕組み

 

 文章の構造を記述するHTML(Hyper Text Markup Language)言語で書かれた情報をインターネットサーバ上の Web サーバに格納し,インターネット上にある端末で Web ブラウザからURL(Uniform Resource Locator)で指定された Web サーバを呼び出し,呼び出されたサーバはHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)という規約で情報を送出し, Web ブラウザが受信して端末に表示を行う.

 Webブラウザとは,Webサーバに格納されている情報(Webページなど)を手元のコンピュータ画面に表示させるためのWWWクライアントソフトのことである.代表的なものとして,モザイク,ネットスケープナビゲータ,インターネットエクスプローラがよく知られている.ブラウズ(browse)とは,本来,拾い読みをするという意味があり,ブラウザ(browser)とは,データベースやファイルの内容を表示するためのプログラムのことを指してきた.しかしインターネットの発達につれ,インターネット上のリソースを表示するプログラムを総称してブラウザと呼び,特にWWWのブラウザをWebブラウザと呼ぶようになってきている.

(1)ネットスケープナビゲータ
 ネットスケープナビゲータ(Netscape Navigator)は,初期の Web ブラウザであるモザイクを開発したメンバーの一部が会社を設立して開発したWebブラウザである.処理速度が速いといった機能性が高く,ネットツールを一つにまとめた多機能ブラウザとして急速にユーザを増やした.

(2)インターネットエクスプローラ
 インターネットエクスプローラ(Internet Explorer)は,マイクロソフト社がNetscape Navigatorに対抗するWebブラウザとして開発したもので,自分流のブラウザに変更できることが魅力となっている.現在は,Netscape Navigatorと共に2大Webブラウザとして争われている.

2.2.2 Webによる情報検索と問題点

 2.2.1で述べたように,WWWは世界中のサーバに張り巡らされており,それぞれのサーバはシステム管理者によって管理されている.しかしながら,すべてのサーバが適切に管理されているとはいい難く,明らかに有害とわかるような情報もかなり発信されている.情報を検索する側が,確かな意識をもってのぞまないと,有害情報の波に飲み込まれることになるので,注意が必要である.フィルタリング技術で,これらの有害情報をある条件に応じて取り除くことも可能ではあるが,最終的には利用者個人個人のモラルにかかわってくる問題であろう.

 最近は,ネットワーク上でソフトウエアやアプリケーションを公開し,ネットワークを通してダウンロードするケースが増えてきている.この方法は,郵便やFAXを使わずに瞬時に欲しいものが手に入るという便利さがあるが,その一方で,ダウンロードするソフトウエアやアプリケーションに隠されていたコンピュータウィルスも一緒にダウンロードしてしまう危険性があることに気をつけなければならない.

 コンピュータウィルスとは,システムやプログラムになんらかの被害を及ぼす目的で作られた悪性のプログラムのことを呼び,あたかも人体を蝕むコンピュータウィルスのような機能をもち,コンピュータネットワークを脅かしている.システムに入り込んだコンピュータウィルスは,潜伏して発病すると,パソコンは予期しない動作を起こしたり,データの改ざん・消滅などといった症状がでる.中には,軽いいたずら程度のことしかしないコンピュータウィルスもあるが,悪性のものになるとその被害は深刻になる.パソコンレベルでこの被害を防ぐには,出所不明のプログラムやフロッピーは使わない,コンピュータウィルスチェックプログラム(ワクチン)の定期的な利用を心がけるなどの予防策が有効である.

 第1章で触れたインターネット上における電子ショッピングについても,自宅や職場から出かけずして,自分の欲しいものを手に入れられるという便利さがある反面,クレジットカードの番号をインターネットを通じて入力することによって盗み見られてしまう危険性が伴う. また,知っておかなければならないこととして,検索した時間やIPアドレス(3.2.2参照)が相手側のサーバに,ログ(通信記録)として残ることである.

2.2.3 Webによる情報発信と問題点

 新聞や書籍,雑誌などのように情報が形として提供されているように,インターネット上では,ホームページという形で情報が提供されている.厳密には,ホームページとは,Webサーバにアクセスするときの最初の起点となるWebページのことをいう.

 Webページがこのように普及した要因として,

・ 地球規模の国を越えた情報発信ができる.

・ 他のメディアより低コストで情報発信ができる(個人でも扱える).

・ ブラウザの機能が飛躍的にアップした(音声,静止画,動画を取り込みやすくなった).

の三つがあげられる.

 それでは,Webページが表示される仕組みについて調べてみる. Webページは,いわばひとつのファイルのようなものである.このファイルにはHTML言語で書かれたデータが記述されており,文字情報だけでなく,音声や画像データを含んだ多彩な情報が表現できるようになっている.つまり,HTMLは,どのようにWebページを構成するかを指示するものである.Webページが表示される仕組みを図2.5で示す.

 

図2.5 Webページが表示される仕組み

 

 しかしながら,Webページを見るだけでは,インターネットをうまく利用しているとは言い難い.一個人が全世界規模の情報発信者になることができ,誰からも制限されることなく意見を主張できるのは,インターネットだけである.やはり,自らも情報を積極的に発信した方が,メリットが大きい.なぜなら誰にとっても欲しい情報,つまり価値のある情報は同じであり,そういう情報をもっている人は対価なしに提供してくれないのが普通である.こちらからもなんらかの情報を提供することで,相手からの情報も受け取りやすくなるものである.

 いい換えると,情報というものは与えられるだけでなく,双方向的に受け渡しするのが理想的な姿であろう.また,自分の作成したWebページに電子メール機能を付けておくと,見てもらったネットワーカーから情報や意見を集めることができる.すなわち,情報収集としての効用も発揮することができる.Webブラウザは,HTMLに記述されている指示に従ってWebページを画面表示する(図2.6).自分のWebページを作成するときに,自分の作成した範囲内だけで内容を閉じてしまうのは,インターネットの性質をうまく利用しているとはいえない.自分が作成した内容には必ずそれに関連したWebページがあるはずである.自分のWebページから,それらのページにリンクすることは,自分のWebページを訪れてくれた人に対する親切のひとつである.ただ,その時にも守らないといけないルールがある.それは,他人のWebページにリンクするときには,リンクをはる相手に対して,原則として承認を得なければならないということである.

図2.6 HTML文書とWebページ(Internet Explorerによる表示)

 Webページを作成して,全世界に情報を発信することは,とても魅力あることではあるが,注意しないと著作権や他人のプライバシーを侵害することになるので,細心の注意を払う必要がある.また,Webページにアクセスしている人は善意の人だけとは限らない.自分の個人情報(写真・電話番号・住所等)を安易に載せることは,それを見た人に悪用される危険性があるので,注意しなければならない.あと,情報を発信するためには,コンピュータがネットワークに常時つながっている必要がある.つながっているということは,外部からもその気になれば,侵入できるということを意味する.クラッカーという,コンピュータシステムを破壊する人もいるので,注意が必要である.ログを設定しておき,誰が自分のWebページにアクセスしにきたのか,わかるようにしておくことは,セキュリティ上重要なことである.