3.2 インターネットのしくみとサービス

3.2.1 インターネットとは

 コンピュータネットワークとは,コンピュータを端末としてそのデータなどを伝送する通信網,あるいは,その全体のことを指す.インターネット(Internet)は,1960年代のアメリカでのARPANETを起源とする(付録1参照)世界規模ネットワークのことである.また,インターネット上の利用技術を企業等の内部ネットワークにおいて用いる形態をイントラネットと呼ぶ.

 インターネットのサービスとしては,WWW(World Wide Web),電子メール,ネットニュースなどがある.

(1)WWW

 WWWは,欧州合同原子核研究機関(CERN)で開発されたソフトウェアの総称で,HTML(Hyper Text Markup Language)で記述された情報をインターネット上のWebサーバに格納し,インターネット上にある端末のWebブラウザで表示する.Webブラウザは,URL(Uniform Resource Locator)で指定されたWebサーバを呼び出し,呼び出されたサーバはHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)という規約で情報を送出し,Webブラウザが受信して端末に表示を行う.

 Webブラウザに表示できる情報は,テキストデータ以外に静止画像,音声,動画像が表示できる.これらのデータは,GIF,JPEG,MPEGなどの圧縮した形式で表現される.表3.4にデータの圧縮形式を示す.

表3.4(a) 画像データの圧縮形式

gif

CompuServeで標準化された画像データ

jpg

JPEG形式による画像データ

tif

汎用性を考慮した画像データ

bmp

Windowsで利用される画像データ

表3.4(b) 音声データの圧縮形式

au

SUNのワークステーションで利用される音声データ

snd

音声データをそのまま羅列した形式

wav

Windowsの音声データ

表3.4(c) 動画データの圧縮形式

mpg

MPEG形式による動画データ

avi

Video for Windowsの動画データ

mov

Quick Time の動画データ

 GIF(Graphic Interchange Format)は,アメリカのパソコン通信ネットワークCompuServeで画像交換用に開発された画像形式である.JPEGと共にインターネット標準の画像形式である.

 JPEG(Joint Photographic Experts Group)は,静止画像データの圧縮方式の一つである.ISOにより設置された専門家組織の名称がそのまま使われている.圧縮の際に,若干の画質劣化を許容する(一部のデータを切り捨てる)方式と,まったく劣化のない方式を選ぶことができ,許容する場合はどの程度劣化させるかを指定することができる.方式によりばらつきはあるが,圧縮率はおおむね1/10〜1/100程度.写真などの自然画の圧縮向きである.

 MPEG(Moving Picture Experts Group)は,映像データの圧縮方式の一つである.ISOにより設置された専門家組織の名称がそのまま使われている.画像の中の動く部分だけを検出し保存するなどしてデータを圧縮している.最初に標準化された規格化のMPEG-1からMPEG-4までの各規格が定められている.再生品質は,MPEG-1がVTR並み,MPEG-2がハイビジョンテレビ並みである.また,MPEG-4は,移動体通信に対する規格である.

(2) 電子メール

 電子メール(Electronic Mail:E-Mail)は,指定された宛先にメッセージを送る機能で,送られたメールは,相手のメールサーバのスプールに格納される.電子メールの宛先のことをメールアドレス(Mail Address)といい,基本的には,「ユーザ名@ドメイン名」の形式である.

 ドメイン名(Domain Name)は,インターネットに参加する組織(個人の場合もある)名のことである.参加する組織は,基本的にその国内でのNIC(ネットワークインフォメーションセンター,日本ではJPNIC)に申請して一意のドメイン名を取得する.

 図3.6に電子メールのアドレス名を示す.日本における組織コード名を表3.5に示す.ゾーンコードで,例えば,jp は日本,uk はイギリス,cn は中国,fr はフランスを表す.アメリカにはゾーンコードがない.

図3.6 電子メールのアドレス

 

表3.5 日本における組織コード名

ac

大学等の高等教育機関・学術機関

ed

初等・中等教育機関

co

企業等の営利組織

go

政府組織

gr

財団法人,社団法人など

ne

ネットワーク・サービス組織

ad

ネットワーク管理組織

or

その他の組織

3.2.2 インターネットの設定

 ここでは,Windows98を例に,LANによるインターネットの接続設定の概要を示す.

(1)ネットワークの設定

 まず,最初に,「スタートメニュー」 → 「設定」 → 「コントロールパネル」 → 「システム」アイコンをクリックし,「デバイスマネジャー」で「ネットワークアダプタ」が正しく設定されていることを確認する.

 次に,「コントロールパネル」 → 「ネットワーク」アイコンをクリックし,「ネットワークの設定」で,TCP/IPが設定されているか確認する.設定されていない場合には,「追加」を選択し,ネットワークのコンポーネントで,「プロトコル」を「追加」して,「Microsoft」の「TCP/IP」を追加(図3.7)する.

 

 

図3.7 TCP/IPプロトコル

 

<TCP/IP>

TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)は,TCPとIPという2つのプロトコル(データ通信の必要な通信規約のこと)のことである.TCPはデータ分割を行い,エラー検出や識別番号などを付加して,TCPパケット(パケットとは情報をあらかじめ決められた大きさにまとめたもの)を作る規約である.IPはTCPパケットの送信先や発信元の情報(IPアドレス)をTCPパケットに付加,IPパケットにしてネットワークに送出,IPパケットの受信先で,TCPパケット部を取り出す規約.受信先のTCPはTCPパケットにエラーがないか調べ,エラーがなければデータを復元し,エラーがある場合にはもう一度送るように送信先に行う.

<DNS>

 DNS(Domain Name System)は,ネットワーク上のコンピュータのホスト名とIPアドレスを対応させるシステムである.全世界のDNSサーバが協調して動作する分散型データベースである.IPアドレスをもとにホスト名を求めたり,その逆を求めたりすることができる.DNSサーバのほとんどは,BINDというソフトウェアで動作している.

 

 次に,TCP/IPの「プロパティ」を選択して,「IPアドレス」の設定(図3.8(a))を行う.IPアドレスは,インターネット・プロトコルにおける計算機の識別番号で,32ビットの整数で,通常,「192.168.0.1」のように,ピリオドで区切られた4つの10進数で表現される.TCP/IPのプロパティにおいて,ゲートウェイの設定およびDNSの設定(使用する場合)をする場合,図3.8(b)のように設定を行う.

(a)IPアドレス

(b)DNS設定

図3.8 TCP/IPのプロパティ

 

(2) WWWの設定

 Internet Explorerの設定では,「表示」メニューの「インターネットのオプション」を選択すると,図3.9のようなダイアログが表示されるので,「LANを利用してインターネットに接続する」を選択する.自宅等から電話回線で接続する場合は,「モデムを使用してインターネットに接続」を選択する.

図3.9 WWWの接続

 

 また,プロキシサーバがある場合には,「プロキシサーバを利用してインターネットに接続する」を選択する.プロキシサーバは,1度アクセスされた情報をサーバに蓄積することにより,回線容量を有効に利用するためのサーバである.

(3) 電子メールの設定

 Outlook Expressにおける設定では,「ツール」メニューの「アカウント」を選択すると,インターネットアカウントが表示される.「メール」の「追加」を選択すると,インターネット接続ウィザードが表示され,アカウント名や電子メールのサーバ名を登録する(図3.10).

 

図3.10 メールサーバの設定

 

<POP>

 POP(Post Office Protocol),IMAP(Internet Message Access Protocol),IMAPは電子メールを保存しているサーバからメールを受信するためのプロトコルである.POPは,ユーザがタイトルや発信者を確認する前に,クライアントが全メールを受信する.IMAPは,発信者やタイトルの一覧を見てから受信するかどうか決められる.

<SMTP>

 SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)は,電子メールを送信するためのプロトコルである.サーバ間でメールのやり取りをしたり,クライアントがサーバにメールを送信する際に用いられる.SMTPサーバのほとんどは,sendmailというソフトウェアで動作している.

3.2.3 ネットワーク機器と機能

(1) イーサネットケーブル

 イーサネット(Ethernet)は,ゼロックス,DEC,インテル社によって共同開発された通信装置であり,1本のケーブルに複数の計算機が接続され,10Mbpsの通信速度を持つ.1/2インチの通信ケーブルを用いる10BASE-5,細い同軸ケーブル10BASE-2,さらに細いケーブル10BASE-Tなどがある.最近は,100Mbpsの通信速度を持つイーサネット規格ができ,従来の10Mbpsと100Mbpsの二つの規格に対応できる製品ができている.

(2) ハブ

 ハブ(HUB)(図3.11)は,10BASE-Tのケーブルであるツイストペアケーブル(twisted pair cable)を接続し,ネットワークを構成する.10BASE-Tのハブは,最大接続段数は4台までである.

(3) リピータ

 リピータ(Repeater)は,イーサネットの延長装置で,信号を増幅することにより,イーサネットのケーブル長(同軸ケーブルの最長は500m)を長くしている.

(4) ゲートウェイ

 ゲートウェイ(Gateway)は,ネットワークとネットワークが接続されている部分の総称である.

(5) ルータ

 ルータ(Router)は,接続されているネットワーク間の情報をインターネット・プロトコル(通信規約)に基づいて相互に送受信する機能のことである.

(6) ファイアウォール

 ファイアウォール(Fire Wall)は,インターネットとイントラネットの接続に用いる.イントラネットへの不正なアクセスを制御し,保護することが主な役割である.

図3.11 ハブとツイストペアケーブル

 

<ストレートケーブルとクロスケーブル>

 10BASE-Tのツイストペアケーブルには,ストレートケーブルとクロスケーブルがある.ストレートケーブルは,ハブと端末間に,クロスケーブルは,ハブのカスケード接続に用いられる.ただし,ハブにカスケード接続用のポートがあれば,ストレートケーブルを用いる.

 ストレートケーブルとクロスケーブルの見分け方は,両端のプラグ(RJ-45)につながっている芯線の色の順序を比較すればよい.ストレートケーブルは両端プラグにつながっている芯線(8本)の色の順序が全く同じであり,クロスケーブルは,両端プラグの1番ピンの色が異なり,両端プラグの8番ピンの色が同じである.